神代植物公園の希少サボテン13選|乾燥地植物室の品種解説
目次 梅雨こそ温室サボテンが狙い目 神代植物公園といえば、春のバラ、秋のダリア——そんな印象を持つ方が多いかもしれません...
神代植物公園といえば、バラ、アジサイ、つつじ——そう思っている方も多いかもしれません。でも、園内のほぼ中央、バラ園に隣接した場所にひっそりと存在する「大温室」は、まるで別の惑星のような空間です。

外は雨でも、曇りでも、関係ありません。一歩扉を開けると、ムッとした熱気と緑のにおいが全身を包みます。頭の上にはバナナの大きな葉、足元の水盤には熱帯スイレンが静かに浮かんでいる。ここは確かに、東京・調布のど真ん中にある場所とは思えない世界です。

大温室が現在の姿にリニューアルされたのは2016年(平成28年)のこと。約1,300種類の熱帯・亜熱帯植物が集まるこの温室は、熱帯花木室・熱帯スイレン室・ベゴニア室・ラン室という4つのエリアで構成された回遊式の観賞温室です。バラフェスタの喧騒とは打って変わって、訪れる人も比較的少なく、ゆっくりと植物と向き合えるのも大きな魅力のひとつです。
大温室の入口は向かって左側です。ここから時計回りに進むと、4つのエリアをスムーズにめぐることができます。所要時間の目安は、じっくり見ても40〜60分ほど。雨の日に立ち寄るには、ちょうどよい滞在時間ではないでしょうか。
最初に足を踏み入れるのが熱帯花木室です。天井に向かってのびる木々の高さに、まず驚かされます。サンジャクバナナの房、エンジェルトランペットの大きな垂れ花、コーヒーノキの艶やかな葉——どれも日本の一般的な庭や公園ではなかなか見られない植物ばかりです。

特に目を引くのが、鮮やかなオレンジ色の花を密集して咲かせるサンタンカ(別名イクソラ)です。熱帯アジア原産のこの花木は、タイや沖縄でよく見かける植物ですが、関東ではほぼ温室でしか見られません。名前の由来は三鷹の「山谷」とも、ポルトガル語とも諸説ありますが、その可憐さはどんな来歴であれ印象的です。


熱帯花木室を抜けると、一変して水辺の空間が広がります。熱帯スイレン室です。
温帯スイレン(日本の一般的なスイレン)と熱帯スイレンの最大の違いは、その色の豊かさにあります。ブルー、パープル、ピンク、ホワイト——熱帯スイレンは寒色系の花色が多く、日本のスイレンではあまり見かけない青紫がかった品種もここでは楽しめます。水面に静かに浮かんだ花を眺めていると、どこか東南アジアの寺院の池を思い出す方も多いかもしれません。

訪れた季節によって開花している品種が変わりますが、夏にかけてが特に見頃のシーズンです。水面のすぐそばまで近づいて観察できる点もうれしいところ。水音のする静かな空間は、気持ちがふっと落ち着く場所でもあります。
大温室のなかで、とりわけ種類の豊富さに驚かされるのがベゴニア室です。

「ベゴニア」と一言でいっても、その種類は実に多彩です。ふっくらとした大輪の花をつける球根ベゴニア、すらりとした茎に花を重ねる木立ベゴニア、そして葉の模様の美しさで愛好家を魅了するレックスベゴニア。この3タイプが一堂に会しているのがこのベゴニア室の見どころです。



なかでも、レックスベゴニアはあまり知名度が高くないかもしれませんが、葉の模様の複雑さと美しさは一見の価値があります。シルバー、グリーン、パープル、ダークレッドが渦を描くように入り混じった葉模様は、まるでモザイクアートのよう。花よりも葉を楽しむ植物として、観葉植物としての人気も静かに高まっています。

球根ベゴニアは特に初夏から夏にかけて美しく、バラを思わせるような豪華な花姿で「温室のバラ」とも呼ばれることがあります。
最後のエリアはラン室です。胡蝶蘭やカトレアをはじめ、さまざまな品種が展示されています。熱帯花木室の賑やかさと比べると、こちらは落ち着いた雰囲気。照明と白い花のコントラストが美しく、写真撮影をされている方も多く見られます。


熱帯花木室でひときわ目を引くのが、実際に「実」をつけている木々の存在です。
バナナはサンジャクバナナという矮性種で、房になった実を枝の先にぶら下げています。「バナナの木を実際に見るのは初めて」という来園者も多く、意外なほどの存在感です。幹に見えるのは実は葉柄(ようへい)が重なったもので、木ではなく草の仲間——そんな豆知識も、温室を歩くと自然に覚えられます。

ブラジル原産のジャボチカバは、幹や太い枝に直接実がびっしりとつく奇妙な果樹です。ブドウに似た黒紫色の実は甘く、現地ではジャムやワインにも使われます。日本ではまだ流通が少なく「幻の果物」ともいわれていますが、最近は苗木を取り寄せて家庭で育てる方も増えてきました。

コーヒーノキは艶のある緑の葉と、真っ赤に色づいた実(コーヒーチェリー)が見どころ。「コーヒーはもとはこんな実だったのか」と驚く方も多い植物です。カカオも同様で、幹から直接ぶら下がるようにつく大きな実は、チョコレートの原料とはにわかに信じがたいほど迫力があります。

カカオは、アフリカの産地ではよく露地で結実しますが神代植物公園の温室の条件下では職員の方は色々とご苦労されたようです。3024年の8月に結実したとの報告が公式Xでなされました。神代ス億物公園公式X
以前におtずれたガーナーの森の中にあるカカオ園出では直射日光を避けた柔らかい木漏れ日の条件化でカカオはよく結実していました。


神代植物公園の温室で特に有名な植物のひとつが、ヒスイカズラです。フィリピン原産のこのつる性植物は、翡翠色(エメラルドグリーン)の花を滝のように垂らして咲きます。開花時期は春が中心ですが、条件が整えば年に複数回見られることもあります。その色は自然界ではほとんど例のない独特のもので、一度見ると忘れられない印象を残します。


サンタンカはオレンジ・赤・ピンクなど色違いの品種が温室内に植えられており、小さな花が集まって丸くまとまるその姿は、見ていて飽きません。沖縄ではごく普通に街路樹として植えられているのに、関東では温室でしか育てられないという気候の差も、植物観察の面白さのひとつです。


インテリアの世界でも人気の高いモンステラですが、観葉植物として部屋に飾っているものとは比べ物にならないスケールで温室内に育っています。葉の切れ込みが深く入った大きな葉が何枚も広がる様子は、熱帯雨林の下層植生そのもの。鉢植えでは想像できないほどの大きさに育ったモンステラを前にすると、自分の部屋のモンステラにも、もっと大きくなれると声をかけたくなります。
温室を歩いていると、じわじわと「家でも育ててみたい」という気持ちが湧いてくることがあります。それはおそらく、植物が「生きている」様子をリアルに目にするからではないでしょうか。
バナナ苗やジャボチカバ苗は、以前は専門の熱帯植物ショップに行かないと手に入らないものでしたが、最近はインターネットでも購入できるようになっています。コーヒーノキやカカオも同様で、室内で小さく育てながら花や実を楽しむ「食べられる観葉植物」として人気が高まっています。
育てる際に気をつけたいのが光の問題です。熱帯植物のほとんどは強い光を好みます。室内で育てる場合は、植物育成ライト(植物ランプ)を使うことで、日照不足を補うことができます。最近は見た目もおしゃれなLEDタイプのものが増えており、インテリアとして部屋に溶け込むデザインのものも多くなりました。
また、室内温室(ミニ温室・ガーデニングハウス)を活用すると、冬でも熱帯植物を安定して管理できます。小型のビニールハウス型のものから、木製フレームのおしゃれなものまで、さまざまなタイプがあります。
植え付けの資材としては、水はけのよい熱帯植物用の専用培養土や、大きめの鉢、緩効性肥料などがあると便利です。温室を見てから育て始めると、どんな姿に育つかをイメージしながら管理できるのも楽しいところです。
晴れた日の神代植物公園は外の花が華やかで、大温室はついつい後回しになりがちです。でも、雨の日はむしろ大温室のベストシーズンかもしれません。
外が雨で人が少ない分、温室内はいつもより静かにめぐれます。雨音を聞きながら、湿気の多い温室の空気に包まれていると、熱帯雨林の雰囲気をより強く感じられます。写真を撮るにも、混雑していないほうが構図が決めやすく、思う存分撮影を楽しめます。
温室を一通り見終えたら、入口近くのベンチで少し休んで、次に行く場所を考えるのもよいでしょう。雨の日の深大寺散策は、人が少なくて境内の静けさが際立ちます。蕎麦屋さんでほっと一息ついてから帰るのも、雨の日ならではの楽しみ方です。
神代植物公園の大温室は、園内への入園料(一般500円・65歳以上250円・中学生200円、小学生以下および都内在住中学生は無料)で利用できます。別料金は不要です。
開園時間は9時30分〜17時(最終入園は16時)、毎週月曜が休園日です(祝日の場合は翌日)。
アクセスは、JR三鷹駅・吉祥寺駅または京王調布駅から小田急バスで「神代植物公園前」下車すぐ。駐車場も隣接していますので、雨の日は車での来園も便利です。
梅雨のあいだ、「どこか行きたいけど雨だし…」と思ったら、ぜひ大温室を思い出してください。あの熱気と緑の香りが、きっと待っています。
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