~静けさと香りが誘う、東京デートの新名所~
―――――――――――――――――――――――――――――――――

AYAじい、最近なんだか若い人が増えたにゃ。お寺の前も賑やかだよ」

「そうじゃのう、ふくにゃん。深大寺と神代植物公園は今や“東京の小さな旅先”じゃ」
週末の深大寺。
門前通りには食べ歩きを楽しむ若者たちの笑い声が響く。
蕎麦の香りを抜け、森を抜けると──そこは光に包まれた神代植物公園のバラ園。
春と秋のバラシーズンには、
広い園内が色と香りで満たされる。
けれど、今回ご紹介するのは、
華やかさよりも「静けさと品のある美しさ」をもつ、日本で育まれた“和のバラ”たち。
そのやさしい佇まいは、恋人たちが心を寄せ合うように咲き、
どこか懐かしく、穏やかな時間を運んでくれる。
🌸 第1章:神代植物公園、恋人たちの小さな旅
神代植物公園のバラ園は、
都内でも珍しく“自然の静寂”を保つ場所。
噴水の音、鳥の声、遠くで風が木々を揺らす音──。
その中を歩くと、まるで時間がゆっくりと流れはじめる。

武蔵野の風情を今に留める神代植物公園の春夏秋冬の空気が好きで。
年間パスポートを購入して散歩を楽しんでいる。
近年、SNSの影響もあり、
「#神代植物公園デート」「#深大寺カフェ」が若い世代の間で人気に。
特に春と秋の週末には、
バラのアーチを背景に写真を撮るカップルの姿が絶えない。
けれど、本当の魅力は写真映えだけではない。
和のバラの前に立つと、花が語りかけてくるような静けさがある。
今回は、そんな“和の心”を映す5つのバラをめぐってみましょう。
🌼 第2章:和のバラ5選 — 静けさと香りをたたえる物語
① 「かがやき」──純白の中の誠実



遠くからでも目を引く鮮やかな赤。
その名にふさわしく、まるで朝日のように輝くバラ──「かがやき」。
京成バラ園によって作出された、日本が誇る代表的なハイブリッドティーローズです。
花弁の表は深紅、裏はやや黄色を帯び、
光を受けると朱と金が混ざり合って温かく輝きます。
その色の重なりは、まるで恋人たちが寄り添いながら
互いの違いを受け入れ、ひとつの輝きになるよう。
京成バラ園によって作出された、
清らかでまっすぐな気持ちを映す日本の名花だ。
鈴木省三氏が監修に関わった京成シリーズの中でも、
特に人気の高い深紅のバラで、
“誠実な愛”を象徴する花として多くのカップルに選ばれている。
香りは穏やかで、近づくとわずかにフルーティ。
派手さはないが、静かに心を包み込むような清らかさがある。
栽培のポイント
・日当たりのよい場所を好むが、真夏の直射は避ける
・病気に強く、初心者でも育てやすい
・春と秋の花後に軽く剪定し、株の形を整える
その花を見つめていると、
“愛とは、言葉よりも静かな光のようなもの”
──そんな言葉が心に浮かぶ。
② 「芳純」──香りで語る愛の記憶

「芳純(ほうじゅん)」は、
日本のバラ界を代表する育種家・鈴木省三氏が1978年に発表した名花。
彼が生涯で最も愛したバラの一つといわれている。

花は濃いローズピンク。
中心に向かって深く染まる色合いは、
まるで人の心の奥にある“思い出”を映しているよう。
そして最大の特徴は、豊かな香り。
ティー系とダマスクの香が重なり、
風が吹くたびに、どこからともなく甘く漂う。
香りを嗅ぐだけで、初恋のような懐かしさが胸に広がる。

この花の名には、
“芳しい香りが心に残るように”という想いが込められている。
恋人たちが寄り添いながらこの花を見上げると、
その香りが二人の記憶にそっと刻まれていく。
栽培のポイント
・よく日に当てると花色と香りがより深まる
・風通しをよくし、梅雨時はうどんこ病に注意
・花が終わったら早めに剪定すると次の蕾が育つ
芳純は、見る人の心を静かに溶かしていく。
「香りが残る愛」──
それが、この花が長く愛され続ける理由なのかもしれない。
③ 「聖火」──時代と共に燃える情熱


オリンピックの聖火のように、
赤とオレンジが混ざり合う花びら。
その名も「聖火(せいか)」。
1964年の東京オリンピックを記念して作られた、日本を代表する名花だ。
作出はもちろん、鈴木省三氏。
戦後の復興を支えた時代の中で、
“希望と情熱を咲かせる花を”という願いから誕生した。

花は中輪で、光を受けると金赤に輝き、
まるで心の奥の勇気を灯すよう。
恋人たちが未来を語り合うように、
この花も“明日を信じる強さ”を感じさせる。
栽培のポイント
・日当たりと風通しのよい場所で管理
・枝がやや細いので、支柱を添えて形を整える
・春と秋の剪定で更新を促す
神代植物公園のバラ園では、
この花の前で写真を撮る若いカップルの姿が多い。
“赤は情熱、オレンジは希望”──
まるで二人の未来そのもののように輝く。
④ 「夕霧」──一日の終わりに咲く優しさ

午後の光が柔らかく傾くころ、
オレンジからピンクに変わる空の色。
そのグラデーションを花に閉じ込めたのが「夕霞(ゆうぎり)」だ。

花弁の縁がほんのりと赤みを帯び、
中心に向かって淡く透けていく。
その色の移ろいは、まるで恋の始まりと終わりを映すよう。
1970年代、日本のバラ育種家たちが
「和の情緒」を取り戻そうと挑戦した時代に誕生した。
派手さを抑えた柔らかな色調と、
控えめな香りが、見る人の心を静かに落ち着かせる。

夕暮れのデートにぴったりの花。
光が沈む直前、花びらが最後の陽を受けて輝く瞬間、
その美しさは一日の終わりにふさわしい“やさしい余韻”を残す。
栽培のポイント
・強すぎる日差しを避け、午前の日光が理想
・剪定は浅めにして、株全体に風を通す
・秋に花が長持ちする性質がある
恋人たちがこの花の前に立てば、
きっと言葉はいらない。
ただ、静かに手をつなぐだけで心が通う、
そんな時間が似合うバラだ。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
⑤ 「緑光」──未来を照らす光のバラ

バラといえば赤やピンクのイメージが強いが、
この「緑光(りょっこう)」はまったく異なる印象を放つ。
花弁は淡いグリーン。
まるで若葉のような透明感があり、
他のどの花よりも静かで清らかだ。

1980年代、京成バラ園が作出した日本独自の名花。
「和のバラ」の進化を象徴する存在であり、
世界のバラ愛好家からも“Zen Rose(禅のバラ)”として注目を集めた。

その姿は、まるで新緑の風が形になったかのよう。
花びらの中心から外側に向かってほんのりと淡黄緑に変化し、
陽の光を受けると白銀のような輝きを見せる。
静けさの中に芯の強さがある。
それはまるで、これからの人生を歩む二人の姿のようだ。
栽培のポイント
・半日陰でも花色が安定しやすい
・暑さにやや弱いので、夏は風通しを確保
・剪定は軽めに、自然樹形を生かすのが美しい
緑光は、“花を咲かせる勇気”を教えてくれる。
恋も人生も、派手でなくていい。
静かな光を自分の中に持っていれば、それで十分だ──。
☕ 第3章:果実屋珈琲で過ごす“バラの余韻”
バラ園を抜けて、深大寺方向へ歩くとすぐに現れるのが
「果実屋珈琲 調布深大寺店」。

ガラス越しに柔らかな光が入り、
店内は木のぬくもりとフルーツの香りに包まれている。
デートの締めくくりにぴったりのカフェだ。
窓際の席からは季節の緑が見え、
静かに流れる音楽が心をほぐしてくれる。
人気メニューは、
たっぷりの果物を使ったフルーツサンドと、
香り高い自家焙煎コーヒー。


バラ園の余韻を感じながら甘い果実を味わう時間は、
まるで花の香りの続きを口にしているよう。
「芳純の香り、まだ少し残ってるね」
「ほんと。今日の香り、忘れたくないね」
そんな会話が自然にこぼれるような、穏やかな午後。
神代植物公園で過ごした時間が、
恋人たちの心にそっと刻まれていく。
💗 第4章:花と香り、そして語らいの時間
花を見て、香りを感じ、味を楽しむ。
この一日の流れは、まるで“感性の旅”だ。

神代植物公園のバラ園は、
ただ美しいだけの場所ではない。
誰かと一緒に歩くことで、
自分の中のやさしさや誠実さを思い出す場所でもある。
日本で生まれた和のバラたちは、
見た目の華やかさよりも「心の奥の余韻」を大切にしている。
それは、恋に似ている。
派手な瞬間よりも、静かに寄り添う時間こそが、
本当の幸福なのだと教えてくれる。
🌸 結び:恋するバラ園、心を映す午後
陽が傾き、空が淡い金色に染まるころ、
神代植物公園のバラ園にも一日の終わりが訪れる。
閉園5時の植物園の職員が自転車で園内をめぐり帰り支度を促している。
光を友としている写真愛好家は時間を惜しんで撮影にいそしむ。
“かがやき”が夕陽を受け、
“夕霧”が最後の光を抱く。
“緑光”はその中で静かに息づき、
まるで未来への希望をそっと灯しているようだった。
「花を見る時間は、心を感じる時間」
恋人たちがこの場所で過ごした午後は、
やがて思い出となり、香りとなって残る。
深大寺の森の奥で、静かに咲く和のバラたちは、
今日も誰かの心にやさしく寄り添っている。
そして──
その先のカフェで、甘い果実と共に語られる恋の物語は、
また新しい季節を運んでくるのだろう。
👉 ――――――――――――――――――――――――――――――――――
―
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

