神代植物公園の温室に実るココアとガーナの思い出

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ふくにゃん
ふくにゃん

ねぇAYAじい、神代植物公園の温室でココアの実を見つけたよ!あんなに大きな実が幹からぶら下がってるなんて不思議だね。

AYAじい
AYAじい

おお、それは珍しいものを見たのぅ。わしも昔、ガーナのココア農園を訪れたときのことを思い出すよ。ココアはチョコレートの原点じゃが、育て方や発酵の方法には奥深い物語があるんじゃ。

神代植物公園の温室で出会うココアの実


東京・調布市にある神代植物公園の大温室では、熱帯植物エリアにココアの木が植えられています。カカオ(学名 Theobroma cacao)はアオギリ科に属する常緑樹で、熱帯アメリカ原産。幹や太い枝から直接大きな実(カカオポッド)が実る姿は、熱帯植物の中でもひときわ目を引きます。

ココアの実は楕円形で長さ15~25cmほど。黄色やオレンジ、赤色へと熟す過程で色が変わり、温室内でも観察できることがあります。東京にいながらチョコレートの原料となる植物を目にできるのは貴重な体験で、訪問者の多くがカメラを向けています。

ガーナの首都アクラとフーフーの思い出


神代植物公園でココアの実を見た瞬間、筆者は昔訪れたアフリカ・ガーナの記憶が蘇りました。首都アクラは大西洋に面し、熱帯気候で一年を通じて蒸し暑く、まさにココア栽培に適した土地です。

街角ではキャッサバやプランテイン(食用バナナ)を使った主食「フーフー」がよく食べられており、筆者も道端の露店で出来立てを味わいました。木鉢の中でふかしたキャッサバやプランテイン(食用バナナ)を杵で突き、もちのように伸びるまで練り上げる調理風景は力強く、見ているだけでエネルギーを感じます。

出来上がったフーフーをスープに浸して食べると、素朴ながら深い味わいが広がりました。

ガーナのココア農園と栽培方法


ガーナの農園では、ココアの木は背丈が4~6mほどと低く管理されています。直射日光を避けるために、ココアの木の間にバナナやシェードツリー(高木)を植え、木陰を作るのが一般的です。これにより過度な乾燥を防ぎ、安定した結実が可能になります。

ガーナのココア園を訪れたのは、雨季で空が連日どんよりして比較的涼しいシーズンでした。熱帯雨林の森の小道を少し行くと樹々がまばらになり薄日が樹々の間からこぼれてくるような場所にカカオが栽培されていました。

幹にぶら下がっているココアポッドには圧倒されます。

カカオの花は受粉が難しい

カカオの花は幹に直接花をつけます。白や薄いピンクの花が見られます。熱帯作物ではよく見られるのですが神大植物公園にもあるジャボチカバなどもその例です。

カカオの花の寿命が短く開花して2日くらいで散ってしまいます。さらに沢山の花が咲く割には実をつける割合が低いのです。小さな花から大きなカカオポッドをつけるのはとても不思議です。

神代植物公園の温室のカカオが職員のご努力の割になかなか実をつける割合が低いのもうなずけます。ガーナーの熱帯雨林の森にはカカオの受粉を助ける虫入るのではと推察します。

カカオビーンの白い果肉は美味しい。

農園の風景は熱帯の湿度と緑に包まれ、幹から直接実がぶら下がる光景は迫力満点。収穫期になると農家は熟したカカオポッドを鉈で割り、中から白い果肉に包まれたココアビーンを取り出します。

この果肉は甘酸っぱく、その場で口にするとフルーツのような爽やかな味わいが広がります。他の熱帯果樹で言えば、中国福建省で食した新鮮なライチ―の味に似ているなと個人的に感じました。

発酵と乾燥:ガーナ独自の知恵

取り出したココアビーンは、そのままでは苦味が強くチョコレートの風味が出ません。ガーナでは昔ながらの発酵方法として、地面にバナナの葉を敷き詰め、その上に白い果肉ごと豆を積み重ねます。さらに上からバナナの葉で覆い、自然の微生物の働きを活かして数日間発酵させるのです。

熱帯モンスーン気候の熱帯雨林では現地の気候に適応してきた有用微生物が生息しています。

バナナの葉にも発酵を促す葉上微生物がいます。これらの微生物が糖分やミネラル、ポリフェノールを含んだ果肉で爆発的に増え順調な発酵を促します。ココアビーンに独特の風味が生まれるのはガーナならではのユニークな知恵です。

発酵後はすのこ状の乾燥台に広げ、太陽光でじっくりと乾燥させます。農家の女性が手で豆を広げながら乾かす光景は、ガーナの農園でよく見られる日常風景です。乾燥が進むにつれ豆の色は濃く変化し、香りが増していきます。この工程を経て、初めて世界に誇るチョコレートの原料が出来上がるのです。

チョコレートへの道と植物園での学び


こうして完成した乾燥カカオ豆は輸出され、各国で焙煎・粉砕・調合されてチョコレートになります。神代植物公園の温室で実った一つのココアの実が、世界の甘い文化とつながっていると考えると、植物園での観察がぐっと深みを増します。

ココアの樹は熱帯植物ですが、日本の温室でその生態を学べることは貴重です。神代植物公園を訪れた際には、ぜひバラや四季の草花とともに、温室の中でココアの実を探してみてください。身近な場所から世界の農業や食文化に触れられる体験は、きっと忘れられない学びとなるでしょう。

まとめ


神代植物公園で見かけたココアの実は、ガーナの農園や食文化の記憶を呼び覚まし、植物学的な理解からチョコレート作りの背景までを繋げてくれました。温室で一粒のココアに出会うことは、世界の暮らしや文化を知る扉を開くことにほかなりません。

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