
バラの中でも、よく香る種類ってあるんだね。

そうなんだよ。香の強い親から生まれたバラはやはりいい香りを放つんだよ。
■ 風が先に届けてくれる“ほのかな予告編”
バラ園ならではのデートには、香りを楽しむという優雅な時間が過ごせるという素敵なことが待っているよ。
「なんだか甘い匂いがするね」
「うん、まだ遠いのに…届くんだね」などという会話が交わされるかもしれない。
香りは、目に見えないのに気持ちへすっと入り込んでくる。
ふたりの呼吸のリズムまで、なんとなく近づくように感じられる。
神代植物公園のバラ園は、この“香りが導く散歩”を自然に楽しめる場所だ。
■ 時間によって表情を変える、バラの香り
バラの香りは、どの時間帯に嗅ぐかで少し変わってくる。
大げさではなく、同じ花でも“雰囲気”が違って聞こえることがある。
- 午前の香り:軽やかで、風にすっと乗ってくる
- 午後の香り:温かみが増して、甘い印象が強まる
- 夕方の香り:落ち着きがあって、深みのある余韻が残る
「今はどんな香りなんだろうね」と小声で話しながら歩くと、それだけでデートの時間が少し特別になる。
■ 香りがそっと心に触れる——強香バラ5選
今日は、香りの“個性”がはっきりしていて、デートで歩くと楽しい五つの品種をご紹介したい。
香りを吸い込むたび、二人の歩幅が自然と揃っていくような、そんな花たちだ。
① フレグラント・アプリコット



アプリコット色の花びらがふんわりと開くと、やさしいフルーツのような香りが立ちのぼる。
「思っていたより甘いね」
「うん、でも爽やかさもある感じ」
植物学的には“フルーティ系の強香”に分類されるが、強すぎることがなく、午後の光の下で最も香りが馴染みやすい。
軽やかで、気分まで明るくなるような香りだ。
② パパ・メイアン


深紅の花びらが印象的で、じっと見てしまうような存在感がある。
香りをそっと吸い込むと、落ち着いたダマスク香がゆっくり広がっていく。
「大人っぽい香りだね」
「うん、深い感じがする」の会話がしっくりと感じる。
ローズの中でも香りがしっかりしている品種で、夕方の少し静かな時間帯に、より豊かに感じられることが多い。
③ 芳純(ほうじゅん)



日本で生まれた“香りの名花”として知られるが、実際に嗅いでみると、なるほどと思えるほど澄みきった香りをまとっている。
甘さと爽やかさのバランスがよく、
「この香り、かなり好きかも」と会話が生まれやすい。
香りの透明度が高く、初めて嗅ぐ人でも親しみやすい印象を受ける。
④ 天津乙女(ティー・ローズ系の香り)




淡い黄色の花びらが光を柔らかく返し、その中心からふわりと漂うのは、上品な“紅茶のような香り”。
強烈な香りではないが、深呼吸したときに胸の奥まで届く感じがあり、歩きながら楽しむのにぴったりだ。
ティー・ローズ系の香りは、気品と落ち着きがあるので、デートの会話にそっと寄り添ってくれるような存在。
⑤ カリーナ



最初の印象は、やさしい甘さ。
そのあとから、すっと澄んだ空気をまとったような透明感が広がる。
花色は鮮やかな朱色で、光の中では特にきれいに見える。
「この香り、なんだか気分がすっきりするね」と話したくなるような心地よさがある。
甘さと爽やかさのバランスがちょうどよく、すれ違った風に乗って香りが戻ってくることも多い。
■ 香りは、小さな思い出の“しおり”になる
バラ園を歩き終えたあと、自然に出てくる会話がある。
「どの香りが好きだった?」
「私はフレグラント・アプリコットかな」
「僕は芳純。あれは忘れられないかも」
同じ花を近い距離で覗き込み、同じ香りを吸い込んだ時間は、あとからそっと思い出せる“小さなしおり”のように残る。
目に見えないのに、ずっと心に留まってくれるもの。
それがきっと、香りの魅力なんだと思う。
神代植物公園のバラ園は、その“香りの記憶”をふたりで共有できる、穏やかな場所だ。
